カセットテープは不滅です
カセットプレーヤ(英: cassette player ; 仏: lecteur de cassettes) [あるいはレコーダ] (英: cassette tape recorder ; 仏: magnétophone)は、ラジカセ、オーディオコンポ、ヘッドホンステレオ、留守番電話機などに組み込まれています。
カセットプレーヤのメカニズムは解りにくく、分解や調整は中級から上級レベルの作業を含みます。何についても言えることですが、まず故障の発生を予防することが大切です。次の3点は、その最も基本的な策です。
さて、不幸にして故障してしまったらどうするか、これからお話しします。
いずれの症状でも、故障ではないかと考える前に、まず電源の確認をしてください。ACプラグは、きちんとコンセントに入っているか、電池は、まだ使えるか、電池の液漏れで電池ボックスが錆び付いていないか、電池の向きは正しいか、などです。
カセットのメカニズムに触れる作業は、機種によっては容易な場合もありますが、一般には作業工数が多くて、かなり精神の集中を要します。といっても、特別に機械工学や電子工学の知識を必要とするわけではありません。パズルを忍耐強く解くのが好きな方なら挑戦する資格が十分にあります。一つ一つ部品を取り外していく時、その順序と、取り付けの位置や向きをメモしておくと、再組み立てがずっと楽になります。また細かいネジやバネは、うっかり跳ね飛ばしやすいものです。細心の注意を払うと共に、作業する場所をきれいにしておくことも大切です。
巻き取り側リール軸の回転トルクが弱いとテープがゴムのピンチローラー附近にたまって巻き付きます。ゴムベルトをアルコールの滲みた綿棒かティッシュで拭いて、ほこりとゴム垢を取り除きます。ベルトが掛かるプ−リや弾み車(いずれも円板状)に着いたゴム垢も拭き取ります。ゴムベルトが伸び過ぎたり切れている場合は、良品と交換するしか有りません。交換部品の探し方は、第11回で紹介しますので参考になさってください。
これらの処置でも巻き取り力が弱い場合は、巻き取りリールの駆動摩擦が弱くなっていることが考えられます。摩擦面を掃除することは有効ですが、作業が面倒なわりに一時的な効果しかないので、あまりお奨めできません。リール組み立てユニットごと交換しましょう。めんどうを避けたい人や細かい作業に自信のない人は、メカニズムをそっくり交換する方が、楽で確実です。
カセット内のテープに巻き取りムラがある場合も、巻き取りのトルクが相対的に不足し、絡み付きが起こります。特に120分や90分のテープで部分的に早送り、巻き戻しをくり返したような場合に巻き取りムラができやすいものです。こうなってしまったテープは、始めから終りまで一気に早送り、巻き戻しを1、2回くり返してやると改善することもあります。でも、いつもうまく行くわけではありません。長時間テープの部分的な早送り、巻き戻しは、一切しないことが何よりです。
鍵盤式(または押し込みボタン式)のデッキが減り、リモコン操作が可能なタッチボタン式のカセットデッキが主流となり、この主のトラブルが増えました。特に長期間使用しなかったカセットデッキに多く発生するトラブルです。
カセットを入れてドアを閉じた時、表示窓にテープカウンターの数字が表示されるようなら、デッキがカセットの挿入を認識しています。ダブルカセットデッキなら、Deck1(または2)とか DeckA(またはB)とかの表示が出るでしょう。もし何の表示も出ない場合は、デッキがカセットの存在を認識していないので、いくら操作ボタンを押しても無効な操作と見なされます。
カセットの挿入の検出は、カセットハウジングの中、よく覗けば外から見える位置にあります。誤消去防止用の折り爪の位置を見ながらカセットを挿入してみると、折り爪に当たる位置にスイッチもしくはスイッチの頭の突起が見えるでしょう。さらにこれと並んで同様のものが幾つか見えることもありますが、これらの一連のスイッチがカセットの存在やテープの磁性体の種類を検出する仕組みになっています。これらのスイッチは、長期間使わなかったり古くなると接触不良になりやすいものです。
軽度の接触不良なら、カセットを入れてドアを閉じたり開いたりすることを50回ほどくり返せば治ることもあります。通常の修理ではスイッチの接点を掃除します。最も簡便には、市販のリレー接点クリーナーのスプレーに長いノズル先を着け、各スイッチの中に強く噴き込みます。このスプレー液は揮発性なのですぐ乾きますが、修理の場合は乾かない内に急いでカセットを入れて、ドアの開け閉めを100回ほどくり返します。
これでも治らなければ、再試行します。3回もやれば大抵治ります。せっかく掃除するのですから、並んでいる全てのスイッチを同時に掃除すると良いでしょう。治ったら、スライドスイッチ用の接点復活剤をスプレーで一噴きしておくと掃除の効果が長もちします。
このような便利なスプレーがない場合には、はなはだ面倒ですが、メカニズムを取り外し、検出スイッチをアルコールで掃除するか、スイッチを新品と交換します。また、スプレーだけでは接触不良が治らず、指を入れて検出スイッチを押すとカセットの認識が表示されることがあります。このような場合にもメカニズムを取り出し、検出スイッチの位置の微調整をします。いずれにしても骨が折れます。
カセットの挿入が認識されているにも拘らずボタン操作に無反応の場合や、鍵盤式のデッキで何も操作が効かない場合には、ゴムベルトが切れているか溶けている、伸び過ぎて空回りしていることなどが考えられます。この場合、PLAY/FF/REW のいずれかのボタンを押して耳を澄ませばモーターの回る音が聞こえるはずです。
ゴムベルトの弛みや汚れによる巻き取りトルクの低下か、カセット内のテープの巻き取りのムラが原因です。
カセットの巻き取りリールに六角の鉛筆やボールペンを通してテープを巻いてみて、どれほどの力(トルク)が必要か、感じてください。次にカセットを入れずにプレーヤを再生モードにして、巻き取り軸を指でつまみ、トルクの感じをつかんでください。カセットテープの巻き取りに必要なトルクと比較し、軸の回転トルクの方が十分に強くなくてはテープはきれいに巻取られません。これが弱々しければ、ゴムベルトの点検をします。
もしゴムベルトが弛んでいれば、交換します。弛んでいなければ、アルコール綿棒を使って、ゴムベルトの表と裏、およびゴムベルトが当たるプーリー溝の汚れとゴム垢を取り除きます。
特定のカセットのリールが固くて回らないのは、テープの巻き取りにムラがあるためです。調子の好いプレーヤを使って早送りと巻き戻しをして、ムラを減らします。
まず、ピンチローラー(黒いゴムのローラー)が欠落していないことを確認します。
ヘッドの脇に直径約1ミリの滑らかな金属棒がありますが、これがキャプスタンです。ピンチローラーがテープを回転中のキャプスタンに押し付けることによってテープが走行するしくみになっています。
ピンチローラーがちゃんとあれば、再生モードにしてキャプスタンが回転していることを確認します。
キャプスタンが回転しているのにテープが走行しないのなら、ピンチローラーが正しい位置に来ていないことになります。ピンチローラーに直接力を加えているスプリングがあるはずですが、これが外れていないか調べます。ヘッドフォンステレオのような小型機ほどスプリングも弱小で外れやすくなります。
また、ピンチローラーは再生/停止ボタンの操作によって、ヘッドと共に上下するよう組み立てられています。この組立て部が滑らかに動くように、機構部をよく見て掃除や注油をするなど工夫してみます。
次に、再生モードでキャプスタンが回転していない場合は、面倒ですが機構部を取り出し、ゴムベルトが切れたり、溶けたり、弛んだり、外れていないか調べます。ゴムベルトが大丈夫なら、モーターが回っていないということになります。
モーターの軸を見て回っていなければ、一旦ベルトをモーター軸から外し、早送り(FF)モードにして、指でコマを回すようにモーターの回転を手伝ってやります。モーターが少しでも自力で回り始めたら、そのまま5分ほど空転させれば元気よく回るようになるでしょう。
モーターが全く回ろうとしなければ、モーターのリード線(2本)間に電圧がかかっているか、テスターを使って調べますが、これ以後は本格的な修理になってしまいます。
ラジカセやオーディオコンポの場合は、AMラジオの受信でも同じ症状があるか調べてください。もしカセットテープの再生音量だけが左右で異なるのなら、ほぼ間違いなくヘッドが汚れています。ヘッドクリーニング液かアルコール綿棒で拭いてください。綿棒の軸は固いものでないと汚れが十分に落ちません。これでも治らなければ、指の爪でかじり取るか、割り箸の先で優しくこすり落とします。
ヘッドがきれいになっても治らなければ、ヘッドが磨耗している可能性があります。懐中電灯とデンタルミラーでテープとの接触面を見るのですが、見なれない人には判断しにくいでしょう。もし磨耗と分ればヘッドを交換することになります。
まれにですが、ヘッドの取り付け角度が狂っている場合も似たような症状になります。しかし、誤ってヘッドをいじったり、ヘッドに無理な力が加わらない限り、ヘッドの位置や角度はまず変わりません。もし心当たりがあれば、ヘッドの位置と角度の調整を試みます。カセットを挿入して、ふたを閉じ、再生ボタンを押します。ヘッドの脇に小さな穴があるでしょう。この穴に細い精密ドライバーを差し込むとごく小さなビスの頭に当たるはずです。ドライバーをビスの頭にしっかり差し込んで、少しずつ慎重に右か左に回します。再生音が最も鮮明になるところで音量も最大になるでしょう。この調整は慣れないと少々難しいかも知れません。
これもほとんどの場合、ヘッドの汚れが原因です。先に述べた方法でヘッドの掃除をしてください。掃除をしても改善されなければ、ヘッドが磨耗しているか、ヘッドの取り付けの角度が狂っているかも知れません。前者は酷使されたカセットプレーヤで起こり得ますが、ある時突然に生じることはありません。後者に心当たりがある時は、上記5.の要領で取り付け角度を再調整してください。
再生のスピードが極端に速すぎる場合、ピンチローラーがテープをキャプスタン軸にしっかり押し付けていないためであることがあります。
再生のスピードが少しだけ速すぎる、または少しだけ遅すぎる場合は、キャプスタンモーターの回転速度の調整をしてみます。モーターの底面に細いドライバーがやっと入る程度の円い小穴があります。ここに細いマイナスドライバーを差し込んで回すことにより調整します。この小穴がない場合でも、回路基板に Capstan Motor Speed Adj の類いの表記のある半固定抵抗器があれば、これを回してスピードの調整をします。
スピード調整をするには、よく聴き馴染んだヴォ−カルテープを再生しながら行うとよいでしょう。再生スピードが狂うと再生音の周波数が狂いますが、楽器より人の声のほうが、耳におかしく聞こえやすいからです。
電気的には停止モードなのに機械的には停止モードにならない場合、テープが取り出せません。こんな時には、まず電源を ON/OFF することによって軽い電気ショックを与えてみます。
これでも復旧しなければ、機構部を取り出し、キャプスタンプーリーを指で回してみます。大抵、カチャ、と音がして機械的にも停止モードになるでしょう。
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