老テクでハイテクを活かす
今日パソコン(英: PC=Personal Computer ; 仏: micro-ordinateur)はすっかり私たちの日常生活に入り込み、家電の仲間入りをしたかの感があります。しかし、一般の家電製品と異なり、品質の未熟なハードウェアとソフトウェアを持ったまま店頭に並び、熟さないうちに商品寿命が尽きてしまいます。現在のパソコンの市場メカニズムでは、性能の不安定な商品を私たちは買って使わざるを得ません。別の表現をすれば、コンピュータ技術は限りない(と思える)理想に向かって常に発展し続ける万年青年のような分野です。
いつ故障するとも知れないパソコンは、バックアップCD-ROM、膨大なマニュアル類、ヘルプデスク、サービスセンターなどのサポートによって品質の未熟さが補われます。このような製品を海外に持って行って使うには、それなりの覚悟と対策が必要です。
★「秒進分歩」といわれるこの分野で、私がここに紹介できる知識はごく限られています。皆様からのヒントをお待ちしています。
この項目でお話する内容は、世界中どこでも共通の当たり前のことばかりです。良い解説書も多いので、ここでは簡単な話だけにします。
Windows 2000, XPの登場で、日本語と現地語とを同一パソコン上で混在させることが容易になってきました。かつては、日本語OSと現地語OSとのダブルブートにしようとして苦心したものです。
一般の電話も携帯電話も使えない地域では、衛星電話も選択肢の一つです。ただし通話料は高く(例えば$3/分)、ビットレート(通信速度)はおおむね低速です(例えば、2400bps)。あまりデータ量の大きいメールを送ってくれないよう、関係者に予め頼んでおくといいかも知れません。
商用のAC電源を使う場合に問題となる要因として、停電、電圧変動、ノイズなどがあります。とりわけ経済的に貧しい国や地域で、より顕著です。そのような地域では、バッテリー内蔵のノートパソコンが有利です。さらにAC90〜240Vの広範囲で使えるACアダプタが付属していれば、AC電源電圧が少々不安定な場所でも安心して使えます。
AC電源に問題のある地域でデスクトップやタワー型のパソコンを使うのなら、大きなバッテリーを組み込んだインバータ電源(英: UPS; 仏: ondulateur)が必需品です。この装置は停電が起こるとバッテリーが唯一のエネルギー源になります。この時何らかの警告音が出るようになっています。
バッテリーがどれだけの時間持つかは、その蓄電容量とパソコンや周辺装置の消費電力によります。バッテリーが持つ時間内に電力が復旧することが絶対確実な場合以外は、すぐにプリンターを停止し、作業中のファイルのデータを保存して、OSを含むすべてのプログラムを正常に終了させます。
長時間の停電が頻繁に起こる地域や商用電源が無い地域では、自家用発電機も活躍します。管理がしっかりしていれば、商用電源より安定した電源の供給が望めます。
パソコンに限らず、ビデオデッキやファックスなどの電子機器も雷から守りましょう。雷鳴が聞こえたら、AC電源プラグをコンセントから抜いてください。電源スイッチを切るだけでは不十分です。電話線もモジュラージャックを取り付け、いつでも抜けるようにしておきましょう。商用電源ラインと電話線とテレビのアンテナ線が、雷によるサージ電圧の三大侵入経路です。
高温と多湿と砂塵を好きな人はあまりいません。精密な電子機器もこれらが苦手です。パソコンは使う時も使わない時も、なるべく涼しいところに置いてやりましょう。エアコンや除湿機を、人のためより機械のために導入することもあるほどです。しかし体や衣服から静電気がパチパチ飛ぶほどに乾燥させては行き過ぎです。
沙漠の周辺の地域では、どんなフィルターをも通過するほど粒子の細かい砂塵が侵入して来ます。地元のエンジニアたちがどのような手段(もしあれば)を講じているか尋ねてみてください。
パソコンはむやみに人に見せないこと、人の出入りする場に置かないことが基本です。窓やドアを壊して侵入した盗人もいます。某国に赴いた時、あるシステムエンジニアは、「コンピュータ室の窓には鉄格子を、ドアには閂錠を付けるように」と指示していました。
乗客が手荷物を持って通るセキュリティコントロールでは、パソコンのハードディスクやフロッピーディスクに影響は無いということになっています。しかし、チェックインして預けられた荷物は乗客の目に触れないところでさらに念入りに検査されることがあり、金属探知機が放つ強い磁気でディスクが壊れた例があります。
ノートパソコンはどなたも自分で機内に持ち込むことでしょうが、MO、Zip、フロッピーなどの磁気ディスクも大切なものは自分で持ちましょう。また到着後、すぐにディスクを実際に使ってみて動作を確かめます。少しでも壊れてしまったディスクは、データの修復を試みてから、思い切り良く捨てましょう。
今日のパソコンのAC入力電源回路は、半導体回路によるスイッチング電源(英; switching regulator ; 仏: alimentation à découpage)方式が主流です。これは、幅広いAC入力電圧に対応できること、重い変圧器を内蔵しなくてよいので軽量化とコストダウンが計れることなどのメリットがあるからです。他方、電源回路が複雑になって部品の数も増え、一旦故障するとメーカーのサービスマニュアルを持たない発展途上国の修理屋さんには、なかなか歯が立ちません。
こんな場合には、電解コンデンサ(英: electrolytic capacitor ; 仏: condensateur électrolytique)を全部新品に交換してしまうという手があります。ハンダごてによる工作ですが、成功率が高いので腕に自信のある方は以下の手順を参考にお試しください。テスターも要ります。
余談ですが、上の例のように回路を理解せずに回路をいじることを工作(英: handicraft; 仏: bricolage)と言い、工作だけで修理する人を工作屋と呼んでバカにする人もいます。工作が失敗してから技術者にその仕事を持ち込んでも嫌われます。良い技術者が近くにいる場合は自分でいじらずに、まず相談してみましょう。
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「海外の不便な地で生活している方々のための家電修理のヒント」Copyright(C) 2000 Fumio Oda