これひとつ知っているだけでもメシが食えるかも
ビデオデッキ(英: VTR=Video Tape Recorder ; 仏: magnétoscope)の機種は多種多様なので、ここにご紹介する方法がすべての機種に適用できるとは限りません。しかし現役の機種の大多数にはそのまま応用することができ、そうでない機種にも参考にしていただけるでしょう。
電源が入らない。カセットが入らない、出て来ない。テープがデッキの中で絡み付く、再生できない、早送りや巻き戻しができない、再生や録画モードにすると数秒後に止まってしまう、映像が映らない、映像が乱れる、映像がザラザラする、色がない、音声がプツプツ途切れる、放送が受信できない、など多岐にわたります。ここでは、次の3項目に絞ります。
ねじ回し(プラスドライバー、大・中・小)、布、アルコール、綿棒、ティッシュ、ピンセット、など
ビデオデッキは、筐体(ケース)を開けやすく、機構部や基板を見やすいので、神経衰弱ゲームの嫌いな人には助かります。しかし筐体を開けた状態で通電して作業をされる時は、感電しないように十分注意してください。
放送の映像は鮮明に映るのに、テープの再生映像は映らない、乱れる、ザラザラする、などの症状の場合は、まず映像ヘッドを掃除してみます。まず上のカバーを留めているビスを外して、デッキを開けます。デッキの内部を見てください。中央か左寄りの位置に軸の傾いた銀色の回転ドラムがあるでしょう。このドラムは、ヘッドドラム(英: head drum ; 仏: tambour aux têtes)またはシリンダーと言います。
映像ヘッドはドラムの側面に付いた黒い微小な突起状の部分で、2〜8個ほどあり、回転ヘッド(英: rotary heads ; 仏: têtes rotatives)とも呼ばれます。HiFiビデオなら回転ヘッドの内2個はHiFi音声ヘッドです。回転ヘッドを単体で扱うことはなく、必ずドラムと一体となって組み立てられ、販売されます。ヘッドドラムはビデオデッキの中で最も精密で高価な部品です。
ヘッドクリーニングテープ(英: head cleaning tape ; 仏: cassette à nettoyer les têtes)があれば、一度試しに使ってみます。画質が改善されれば、もう一度だけ使います。連続して3回以上使うとヘッドを傷めることがあるので、10分ほど休ませます。2回試しても画質が改善しなければ、ヘッドの汚れが頑固であるか、ヘッドが摩滅したか、壊れているおそれがあります。ヘッドが1個でも摩滅または損傷したら、ドラムごと交換します。
四季を通じて雨の降る日本では、ヘッドの磨耗はほとんど問題になりません。しかし砂漠の周辺の国々では、砂塵によってヘッドが思いのほか早くすり減ります。カバーをかけるくらいでは、全く効果がありません。このトラブルを予防する方法があるかどうか、私は知りません。
ヘッドクリーニングテープがない時、あるいは汚れが頑固な場合は、アルコールで掃除します。まず平織りのワイシャツ生地のような、緻密で毳(けば)立ちのない端切れ(10cm四方程度)を用意し、その中央あたりに若干のアルコールを滲み込ませます。アルコールの滲みた部分に中指か薬指の腹を当て、ちょうど傷の手当をするように、静かに軽くヘッドを布越しに押さえます。ヘッドの突起が布を通して指の腹に感じられたら、少しだけ指の力を増して布をドラムに密着させます。そしてこの指をしっかり固定したまま、別の手でドラムの上部を持って少しだけ前後にクリクリと5〜6回動かします。あまり力を入れ過ぎるとヘッドが壊れます。また布を当てた指を上下方向に動かしてもヘッドが壊れます。
ここで布を見ると黒っぽい線が着いているでしょう。これがヘッドの汚れです。同じ様にして全ヘッドを掃除します。ドラムについたアルコールが完全に蒸発するのを待って、鮮明に録画されているテープを再生し、鮮明な映像が再生されることが確認できれば、大成功です。HiFi音声出力も同時に改善しているはずです。一発で成功しなくても、画質がいくらか改善されていれば、もう一度ヘッドを掃除してみてください。
回転ヘッドの掃除が終わったら、ついでにテープパス(通り道)も掃除しましょう。一度再生モードにしてテープの通り道をよく見てください。カセットを取り出してから、テープがふれる部分の全箇所をアルコール綿棒で拭きます。もし見分けられる方は、固定ヘッド類、ピンチローラ(黒いゴムのローラー)、キャプスタン軸(ピンチローラがテープを押し着ける金属の軸)などを特に念入りに力を入れて掃除してください。
再生モードでトラッキングがずれている場合は、きれいな映像とノイズとが同時に、または交互に現れます。もちろん、正常に録画されていることが確かなテープを再生して見た場合の話です。手動でトラッキングを調整してみても映像ノイズが消えず、しかも映像ノイズが何分間も継続して画面上の同じ位置に現れていれば、テープ走行部の機械的狂いが原因です。機構部の念入りな掃除と注油(し過ぎないように!)をします。ノイズが現れたり消えたりする場合は、トラッキング制御ループのどこかに問題が有ります。固定ヘッドの汚れ、ゴムベルト(デッキの下面からアクセスする)の汚れか伸び過ぎ、キャプスタンモータかそのサーボ回路の故障などが考えられます。
回路基板の故障によって映像にトラブルが生じることも当然有ります。診断には、図面や計測器が必要ですので、ここでは扱いません。ただし、今日の製造技術では回路故障の発生は、機構部と比べてずっと少なくなりました。一般に、動かない部分は動く部分よりも、故障が起こりにくいものです。
停止モードで放送の映像が鮮明でない場合は、アンテナ、アンテナケーブル、UHF/VHF カップラ−(coupler:アンテナ柱上に在ることも有る)、ビデオデッキとテレビ受像機の間の結線などをまず確認します。テレビだけならよく映るのに、ビデオデッキで選局して出力した映像だけ映りが悪いのなら、ビデオデッキのチャンネル設定がずれてしまったのかも知れません。小さいお子さんがいたずらすることもあります。これはチャンネルの再設定をすれば治ります。ただしビデオデッキの内蔵チューナーが故障していれば、いくら設定をしても治りません。これの修理もここでは扱いません。
日本、韓国、米国などの国内むけNTSC専用機をアフリカや中東などでお使いになる場合、PALやSECAM方式の放送は映像も音声も正しく受信できません。皆様の国のテレビジョン方式がどのシステムであるか、知っておいてください。なお、NTSC4.43とMESECAMとはいかなるものか、「第4章テレビの修理のヒント」の中で説明します。
テープが全く動かない、または早送り(FF)と巻き戻し(REW)に時間がかかり過ぎる、テープのエッジが傷む、などのトラブルの対処法を紹介します。テープの動きは外からは見えませんが、テープカウンターを見ても大体判ります。
本来テープが動くPLAY/REC/FF/REW などのモードで、テープが全く動かない場合は、機械とテープとを保護するため、5〜10秒以内に自動的に電源OFFモードに移ります。PLAY/REC モードでテープの供給側リール(向かって左のリール)だけが回って巻取り側リールが回らない場合にはテープがピンチローラーの脇に溜ってテープを傷めるので、やはり自動的に電源OFFモードに移ります。テープが巻取られ続けていれば、テープカウンターの故障がない限り電源OFFにはなりません。
まれですが、テープカウンターが故障するとテープ走行を認識できなくなります。すると、左右のリールが正しく回転していても、テープ走行モード(PLAY, REC, FF, REW など)に移行して数秒後にテープが止まってしまいます。テープカウンターの交換は、技能を要します。
FF/REW モードにしてテープが高速で巻取られないのは、リールが正常に回っていないということです。デッキの下面のパネルが外れるようなら外し、デッキの側面を下にして立てます。この時、左右を比べてより重い側を下にして立てます。(大抵は左側の方が重く、右利きの修理人に有利です。)二つのリール座の間にあるプ−リを手で左右に回してみると、歯車か摩擦車の様なものが左右に首を振るように動くはずです。この部分を「アイドラ組み立て」と呼びます。これは消耗品で、老朽化すると摩擦係数が低下し、モータの力をリールに十分に伝えられなくなります。
「アイドラ組み立て」は、ゴムベルトを介し、モーターから動力を受けます。ゴムベルトも消耗品で、老朽化すると伸びて滑りやすくなります。切れたり溶けることもあります。ベルトの掛かるプ−リが割れたり、軸から抜けることもあります。また言うまでもなく、PLAY, FF, REW などのモードでは、モータが回らなければ、何も動きません。
ゴム製の部品が老朽化したした場合、ゴムの表面を掃除したりサンドペーパーで磨いても、あまり効果はありません。お手数でも、できるだけ早く新品と交換してください。
PLAY モードでは、ピンチローラー(黒くて太い)がテープをキャプスタン軸にしっかり押し付けないと、テープが全く動かないか、異常に速く動いて画像が乱れます。またテープの張力を調節するレバー類(テンションレバーと呼ぶ)がスムーズに動かなくても動作が乱れます。これらの部品の動きがぎこちないようでしたら、注油して、強制的に手で50回ほど振ってやります。50回で治らなければ、100回、200回と、スムーズに動くようになるまで繰り返します。
走行中のテープがピンチローラーのところで上または下にせり出すと、テープが傷みます。完全にテープが外れるまでせり出すと異常に気付きますが、せり出しがわずかの場合、テープの上エッジまたは下エッジがでこぼこになっていることに後で気付くこともあります。このようなテープはたいてい使用できなくなります。原因はピンチローラーの不均一な磨耗です。これはピンチローラーを横から見るとわかります。この場合、迷わずピンチローラーを新品に取り替えます。
消耗品は、メーカのサービスセンター(名称はまちまち)から取り寄せます。「アイドラ組み立て」、「アイドラ用ゴムベルト」、「ピンチローラー」のように部品名を明記し、機種名と共にメーカに問い合わせます。正確な部品名が分らない場合は、部品の位置と形状をスケッチして送ると良いでしょう。機種によっては、「消耗品補修キット」と称する便利なものをメーカが用意していることもあります。これには作業手順の説明書が図解入りで付いていて親切です。
その他の原因として、リールのブレーキが解除されなくてリールが回らないことがあります。ブレーキの作動と解除は、プランジャ(古い機種)やカム(新しい機種)がレバーやクランクを介して行いますが、これらは目視できない構造になっていることも多く、修理はめんどうです。
テープローディング(カセットからテープを引き出してヘッドドラムに巻き付けること)が完了せず、途中でつかえている時も保護回路が働いて電源OFFモードになってしまいます。(EJECT モードになる機種もあります。)このような場合は、電源コードを抜き差しするとSTOPモード、あるいはEJECT モードになることがあります。ここでカセットを一旦取り出してください。
電源コードを抜き差ししてもテープが途中でつかえている場合は、一旦電源コードを抜き、手でモータやベルトのプーリーを回してカセットテープを抜き取り、再び電源コードをつなぎます。さらにもう一度電源コードを抜き、またつなぎます。壊れていなければ、これでメカニズムがリセットされ、EJECTの完了状態で停止します。こうしてから改めてカセットを入れてみます。他に故障がなければ、これで正常に動作することも多くあります。
同じ問題がまた起こるようなら、カセットを抜き取った上でテープローディング機構をアルコールなどできれいに掃除し、元通り、シリコングリースやミシンオイルを引きます。また、モードスイッチ(ロータリー型スイッチとスライド型スイッチとがある)の掃除もできるだけしましょう。モードスイッチはシャシーの下などの取り外しにくい場所にあるので、掃除は面倒です。気合いを入れて取り組まねばなりません。スプレー式の接点復活剤(スライド接点用)を噴き付けるだけでも多少の効果があります。
[注意] 以下の説明は、ビデオデッキのメカニズム(機構部)が、一度も誤った分解/再組立をされたことがないことを前提としています。歯車の歯は、一つでも誤って噛み合わせると、正しい動作ができなくなる場合があります。例えば、メカニズムの分解中にうっかりデッキに通電すると、メカニズムが誤動作して、機種によってはギヤの正しい噛み合わせ位置が分らなくなってしまいます。こうなってからでは、サービスマニュアルがないと修理を進められない場合もあります。
今日のビデオデッキは、フロントローディング機構といって、カセットを前面から挿入すると中に引き込んでリール座にセットします。この動作を、カセットローディングと呼び、上の2.で話したテープローディングと区別します。またカセットの取り出しは、カセットイジェクトと呼びます。これらの不具合の場合、修理は少々面倒です。忍耐と閃きとでチャレンジしてください。
筐体の上部カバーを開けて、観察します。
まず、電源ボやンをON/OFF/ONと押してみます。これでカセットが出てくることがあります。出て来なければ、コンセントにACプラグの抜き差しをくり返すと、運好く出てくることもあります。もし出て来なければ、カセットローディング/イジェクト用のモーター(キャプスタンモーターが兼用している事もある)のプーリーやゴムベルトを手で回してカセットを取り出します。
テープ引き出し用のガイドポール(2個)がカセットの外に見える場合は、テープローディング用のモーター(これもキャプスタンモーターが兼用している事がある)のプーリーを手で回してガイドポールをカセットの中に戻します。こうしてから上に述べた方法でカセットを取り出しますが、テープが弛んでいる場合はテープを傷めないように注意しながら、取り出します。
テープを犠牲にしてもかまわない場合は、テープをはさみで切ってやると上の作業が楽にできます。
何とかしてカセットを取り出したら、電源プラグをコンセントに差し込みます。メカニズムが停止するのを待ってから、一旦電源プラグを抜き、再びコンセントに差し込みます。故障がなければこれでメカニズムがリセットし、EJECTの完了状態で停止します。改めてカセットを挿入し、きちんとカセットがローディングされることを確認してください。ローディングがうまく行かない場合は、次の項目に行きます。
EJECTボタンを押すとカセットが挿入口まで出てくるのに、すぐ再び中に引き込まれてしまうトラブルもあります。これは殆どがテープセンサーの汚れか故障によるものです。VHS方式では、光学式のテープセンサーを用いています。カセットがデッキ内に鎮座するスペースを見ると、その左右の中央線上、テープの手前側(ユーザから見て)に灯台のような形をした塔が立っています。ここから赤外線(古い機種では可視光線)を発し、左右の受光素子で光の有無を検出します。この中央の塔や受光部がほこりなどで汚れてデッキが誤動作することがあります。透明プラスチックの塔は光を屈折させるプリズムを兼ねていることもあります。柔らかい布か綿棒で上から下までていねいに拭いてください。また、センサーが故障の場合の交換作業は、技能者に任せてください。
今日のビデオデッキには、主電源スイッチがありません。電源コードがAC電源に接続されていればデッキの電源(POWERの表示)がOFFでも、カセットをデッキに挿入すると電源がONになり、カセットが中に引き込まれる仕組みになっています。
カセットが全く引き込まれない場合は、上部カバーを開けてメカニズムが見える状態にし、次のことを試みてください。
カセットローディングが正しく完了せずに途中で止まると、保護回路が働いて自動的に電源OFFモードに移行したり、カセットを排出したりします。一旦電源プラグをコンセントから抜いて、再び差し込むことを2、3回くり返してから、再試行します。この時、上のB.i.に準じて、カセットローディングを手伝ってやります。
カセットが台座まで下りるのに、その直後に電源がOFFになってしまうかカセットが排出されるようなら、ローディング完了を検出するセンサーの動作不良が考えられます。光学式センサーの発光部(灯台)はカセット座部左右の中心線上、テープの手前側(ユーザから見て)にあります。スイッチ式の検出センサーは、カセットハウジングの右側の機構部の下の方にあります。光学式センサーなら発光部(灯台)の頭部と透明プリズムの表面の掃除を、スイッチ式なら接点の掃除や位置の微調整をします。
誤消去防止カセット(爪がない)の場合は、カセットローディングが完了すれば自動的にPLAYモードに移行するのが正常です。爪付きカセットの場合、デッキはSTOPモードになります。古い機種の場合にはテープがカセット内に収まったままでSTOPモードになりますが、新しい機種の場合はテープローディングをしてからSTOPモードになります。どの機種でも、テープローディングが完了せずに途中で止まると保護回路が働いて、電源がOFFになるか、カセットが排出されます。
テープローディング機構の全体を目で見ることは、通常できません。筐体の上下のカバーを開けて、よく観察してください。異物がはさまっている、ベルトが切れている、プーリーが破損、あるいは抜け落ちている、プラスチックの歯車がつぶれている、ピン類が外れて部品がガタついている、等々の不具合がないか調べます。
筐体を開けて、動力部を点検します。ひびの入った歯車、ゆるんだネジ類、鉛筆、子供が遊ぶカード、昆虫、コイン、錆び、その他、何でもありです。まともな故障としては、キャプスタン軸の一番下にかぶせるように取り付けたプーリーや歯車に微少なひびが入っていることがあります。
「海外の不便な地で生活している方々のための家電修理のヒント」Copyright(C) 2000 Fumio Oda